このたび、第28回 日本 Advanced Heart & Vascular Surgery/OPCAB 学会を開催させていただくことになりました。

今学会のテーマは「安全、確実、耐久性のある心臓血管外科手術」としました。MICS 僧帽弁形成術やFET を用いた弓部置換など手術の低侵襲化が進んでいますが、やはり古典的な術式が必要となる場面があります。そこで一般演題では、特に基本手技に重点をおいたセッションを多く設けました。

そして細かいデータよりも実際の画像を中心に手技におけるコツやピットフォールについて発表していただくように演者にお願いしています。さらに最近では珍しくなったライブ手術デモンストレーションを行います。また特別企画として、40歳前後の若手外科医に苦労した症例のビデオを提示していただき、先輩外科医から助言を得るセッションも設けることにしました。

若手からベテランの外科医まで幅広く楽しめるプログラムを用意させていただきました。新型コロナも第５類扱いとなり、制限が無くなった久しぶりの学会となります。皆様が学会会場で直接顔を合わせ、熱いディスカッションを戦わせていただくことを楽しみにしています。

会長：土井　潔
岐阜大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管外科学分野 教授

第28回 日本 Advanced Heart & Vascular Surgery/OPCAB 学会では、私は、5年ぶりのライブ手術で、正中切開の僧帽弁形成術（MVP）のコツについて、解説します。

昨今低侵襲化の波が押し寄せ、MICS で手術しないと遅れているような圧迫感があります。しかし、どのような手術でも learning curve が存在し、特にMVP では、遺残逆流の問題があります。水試験で正確な評価が難しいこと、遮断解除後 mild-mod の逆流を残しても、2nd run を行い再度形成を行う決断ができず、後日再手術となるケースが増えています。その他、再膨張性肺水腫、大腿動静脈からの人工心肺確立にもガイドワイヤーによる血管や心臓損傷、下肢虚血、最悪心筋保護不十分による死亡症例の報告もあります。MICS では、複雑な手技が難しく、多くの施設で形成術式がループ法に変更されています。変性弁膜の切除法の良好な成績は事実証明されています。30 年間の MVP の歴史を無視して MICS ではその簡便性からループ法に変更です。本末転倒であると言えます。また、MICS で形成困難な時には正中切開に変更しますが、限られた時間内で安全に MVP を成功させなければならないため窮地に陥ります。

私も50 例の MICS を経験し、learning curve に陥り、強く反省しました。MVP は僧帽弁逆流をきちんと治す手術です。小さな創で行うのが目的ではありません。正中切開 MVP を確実にできることが心臓血管外科医の必須の資質であると考えます。

そこで、ちょっとしたコツで、正中切開 MVP を良い視野で確実に快適にできる方法をお伝えしたいと思います。30 年間500 例の MVP の経験から得られたものを全てお知らせしようと考えています。

流行に左右されず、確実にMVP を行い、合併症のない、生涯再手術のない、感謝される手術を golden standard にすべきです。このメッセージをライブを通じてお示ししたいと思います。活発な議論を期待します。

会長：澤﨑　優
一宮西病院　心臓血管外科部長、ハートセンター長、弁膜症センター長、心エコー部長

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